コラム目次へ

コラム倉庫

2007.05

 
お寺の掲示板

新しくお寺ができたとき、山門の脇に掲示板を作ってもらいました。「お念仏の会」の案内や、宗門から送られてくるポスターを掲示しています。
このほかに、大切にしたい教えや、印象に残る言葉を墨書して掲げよう、ということになりました。
初めに掲示させて頂いたみ教えは、お釈迦さまのお言葉――『法句経』からの一節です。

「意味のない千の言葉よりも 道にかなう
たったひとつの言葉の方が価値がある
その言葉は それを耳にした者に
平安をもたらす」

日々幾千万の言葉が、やって来てはまた去ってゆきます。本当に価値のある言葉と出会うことができるならば、それがいかに貴重な機会であることか…。
「道にかなうたったひとつの言葉」とは…? その言葉はおそらく、彼方の世界の響きに満ちていることでしょう。彼方の世界の沈黙、彼方の世界の香りを運んでいることでしょう。いっさいの論評を拒絶するような、孤峰の高みを吹き渡る風のようなものでありましょう。紙に書いて記録しておくようなものではなく、語られたそのときが、まるで千の花弁をもつ蓮の花が開花した瞬間のよう――ただただそれに圧倒され、ひれ伏すのみでありましょう。

いく片かの残響が、それを失うことを憂える弟子たちによって記録されました。
数百年数千年を経たのちであっても、そうした価値ある言葉の残響にいささかなりとも触れることができるならば、私たちは充分に幸せです。

ご寄付のページへ