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Q&A 176

質問176

仏教, 宗教
 私は死ぬのがとても怖いのです。どうすればよいでしょうか?
〈回答 176〉 実は先日、夢の中で師に同じ質問をしました。師はこのように答えてくれました。

「ほう、お前は死ぬのがそんなに怖いか。
よろしい。では、よく考えてみなさい。お前はプライドの強い人間かね。プライドの強い人間はこう考える。
『私は価値のある人間だ。だが、死は敗北だ。自分が敗北するなんて、とても認められない。自分はこれまで勝ち続けてきた。死=敗北は、何としても避けなければならない。』
だが、心配はいらない。お前よりも価値のある人間は、これまで無数にいた。本当に優秀ですばらしい人々が、満天の星の数ほど生きてきた。だが、彼らの誰一人として、『死にそこなった』人はいない。死のハードルの手前でうろうろして醜態をさらしている人など、一人もいない。どんなに価値があり、どんなに勝ち続けてきた人でも、上手に死をやり遂げている。お前にそれができないはずはない。失敗の可能性はひとつもありはしない。

「それともお前は、美しい肉体とこの上ない美貌の持ち主かね。死によってそれが無に帰すのが惜しいのかね。
心配ご無用。お前の1000倍美しい人たちが、あっさりと、間違いなく死んでいる。死のハードルの手前で立ち止まり、『この美しい私が失われても良いのですか!』と抗議し続けている人に会ったことがあるかね。そんな人は一人もいない。だから怖れなくても良い。お前も立派に、あっさりと死のハードルを越えることができるだろう。

「あるいは、お前にはやり残したことがたくさんあるのだろうか。そして、『このまま死ぬわけにはいかない』とでも言いたいのだろうか。
そうだ。もちろん、心配はいらない。お前の1000倍やり残しの人生を生きてきた人たちがこれまでに山ほどいる。彼らは、後悔の心を強烈に残しつつも、みな命を手放してきた。100人中100人がすべて、見事に死のハードルを越えている。やりそこなった人は一人もいない。だから、お前が失敗することはあり得ない。時が来れば必ず、お前もこのハードルを越えることになる。何も怖れることはない。

「なになに、お前はそれほどプライドが強いわけでも、肉体が美しいわけでもない? これまでの人生で大きなやり残しも思い浮かばない? とにかく死が怖いだけだと?
よろしい。わたしの答えは同じ—そうだ、まったく心配はいらない。お前の1000倍怖がりの人がこれまでに100万人はいた。しかし、死のハードルの前で、恐怖にふるえて縮こまってしゃがんでいる人に会ったことがあるかね。いいや、そんな人は一人もいない。どんなに怖がりの人でも、簡単に、やすやすとこのハードルを越えている。お前が失敗する可能性はゼロだ。だから、心配する必要はまったくない。

「だから、お前が怖れなければならないのは、『死』ではない。むしろ『生』だ。この貴重な、限られた時間を無駄に過ごしているのではないか。本当にやるべきことをせずに、どうでもよいことに一喜一憂して人生を浪費しているのではないか。真に学ぶべきことがたくさんあるというのに、何一つ学んでいないのではないか。お前はこれこそを怖れなければならない。
そして、もう一つ。死のハードルを越えた後のことだ。そのあとはどうなると思うかね。そうだ、その先のことを怖れなければならない。」

そして、師はいたずらっぽく片目をつぶって、こうつけ加えました。

「本当のところ、『死のハードル』なんてどこにもないかも知れないね!」