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Q&A 124

質問124

修行
私は現在、僧偕を取得すべく仏教系の大学に通っています。一般の学生は「坊主丸儲け」「葬式仏教」などと批判的な意見の学生が多いです。たしかにそのような部分もあると思います。しかし、これから資格をとっていくのに、そのようなことを言われると残念な気持ちになります。自分はそう言われたくないのですが、本当の僧侶はどうあるべきでしょうか? またどういった返答をすればいいでしょうか?
〈回答 124〉 「一般の学生は『坊主丸もうけ』『葬式仏教』などと批判的な意見の学生が多いです」ということですが、これは学生に限らず、大人たちにもある(否、もともと大人たちの)意見ですね。私も、よく言われるのは「お寺さんは税金がかからなくていいですね。」という言葉です。私が、
「私たちは、宗教法人(団体)の職員として、給与を受けています。給与にかかる所得税はちゃんと納めていますよ。法人の方には法人税がかからなかったり、固定資産税等がかからなかったりはしますが。」
と言いますと、びっくりされます。
つまり、布施などの収入を、「無税で個人に入るお金」だと思っている方々がいるのです。

宗教法人は、学校法人や社会福祉法人と同じく、公益法人のひとつです。「公益」を目的としており、「収益をあげる」ことが目的ではありません。ということは、公益のために必要なことであれば、その事業を行なっても100%持ち出しで、まったく収入もなかったとしても、お金を集めてその事業を行なう場合もあるわけです。
収益事業ですと、この逆になりますね。収益が上がる(儲かる)からその事業を行なうわけです。収益を上げて、出資者に分配します。
固い話になりましたが、ここが大事なところ。つまり私たちは、仏教を広め、お念仏の教えを伝えてゆくことで人々の心に安らぎを与えるという、公益のための活動を行なっているわけです。その活動のためにはお金がかかります。宗教施設の維持管理、人件費…。それらを(主として)お布施の収入でまかなっているわけです。
そして、「公益事業を保護する」という政策的な観点から、法人税等について税法上の優遇を受けているのです。ですから「坊主丸もうけ」という非難(?)は、ちょっとピントがずれています。

では、私たち僧侶はどうあるべきか? 上に書きました「公益事業」という点も含めて考えてみますと、
  • 私たちは「広く社会に奉仕する」という立場を基本にする。
  • 社会が寺院・僧侶に何を期待しているか、を常に考える。
  • あたたかい心をもって人々に接する。私たちは「死別」に関わることが多いので、傷ついた方や、弱い立場の方への思いやりの心が特に大切です。
  • この仕事に誇りと自信をもち、また同時に高慢にならぬように気をつける。
というようなことではないでしょうか。
昔から「僧侶は一に掃除、二に勤行、三に学問」といわれますね。大事にすべき戒めです。この戒めに加えて、上に書いたことも考えて下さい。

では、一般の学生の批判にどう答えるか…。
——実は、私が仏門に入るずっと前、お寺の息子さんの友人がいました。彼は上京し、「ミュージシャンになる!」と頑張っていたのですが、住職であるお父様が病気になられたのをきっかけに、田舎に帰り寺を継ぐことになりました。そのとき私は「坊主丸もうけでいいなあ」とは決して思いませんでした。むしろ、「希望する職業が選べなくて気の毒だなあ」と思いました。
「一般学生の批判」は、もしかしたら「安定した将来の展望があって羨ましい」気持ちの裏返しではないでしょうか。自分の将来をしっかり見据えている人であれば、寺を継ぐ立場の友人を批判している暇はないと思います。
「自分は自分。君は君。道は違うがお互いに頑張ろう。」というのが健全な友情ではないでしょうか。
またこの時代、お寺を継ぐ側にも苦悩はあるはずです。そうしたことも共に語り合える友だちがいると良いですね。

H19.8.1 追記:この質問に関連して、「僧侶になりたい、あるいは僧侶になるにはどうすればよいか、とお考えの方へ」というページを新設しました。こちらもご覧下さい)
ひとこと■ 現役のご住職からだと思いますが、ご質問者に宛てて以下のような励ましの「ひとこと」を戴きました。掲載いたします
 残念ながら、上記のように見られてもしょうがない状況もあるでしょう。しかし、あなた自身がこれから宗教者としていかに生きていくか、また檀信徒をはじめ、一般の方々にどう寄り添っていくかということの方が大事なのではないでしょうか? 批判されることはつらいですが、あなたのご宗旨のお祖師様のご苦労と比較したらどうでしょう? お祖師様がたは、まさに命がけであったはずです。あなたは、そのお祖師様の教えに基づいて宗教活動をしていくわけですから、逆に「一般の人々はこういう風に私たちを見ているんだ」と勉強できただけでもありがたいといえるかもしれません。
 いかに、あなた自身が胸を張れるか。僧籍をいただいてからが本当のスタートです。お互いに頑張りましょう!

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