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2018.01

 
明けましておめでとうございます

 旧年中の皆さまのご支援やお励ましに対し、心より感謝申し上げます。
 本年が、皆さまにとって実り多き年でありますよう祈念いたします。

 昨年は、長年の課題であったウェブサイトの英語ページの拡充を図ることができました。今回は、国際開教=英語による布教を思い立った経緯について書きましょう。

 今から20年近く前、私は都内港区にある浄土宗寺院に職員として勤めていました。やりがいも感じていましたが、自分の将来を考えて、ハワイ開教区に開教使として赴任することを展望していました。そこで勤務先の上司(住職)の許しと支援を頂いて一週間ほどハワイの開教区を見学させてもらったのです。ホノルル別院をはじめハワイ島4ヶ寺、マウイ島2ヶ寺を案内して頂き、当時赴任されていた開教使の皆さんのお話を伺うことができました。
 海外の浄土宗寺院を支えているのは、当初より日本人の海外移民、またその子孫である日系人の檀信徒の方々です。しかし、将来の発展のためには、ゆくゆくは日系人以外の方々に布教の対象を広げていかなければならないでしょう。共通の文化をもたないアメリカ人に対して教えを伝えることが、果たして自分にできるのか、言葉や理屈でもって念仏の教えを理解してもらうことができるのか——当時の私にはその自信がなく、考えた末、赴任を断念しました。
 その後、ご縁をいただいて東京多摩地区に新しい寺を構えることになり、みなさんに助けられながら20年が過ぎました。寺院活動をしながらも、ハワイでの経験から湧いてきた問いが常に頭のどこかにありました。「法然上人のお念仏の教えは、日本人あるいは日系人にしか理解できないものなのか?」

 そんな中ここ数年、少しずつ世の中の風向きが変わってきました。たとえば、「マインドフルネス」の流行。その最大の功労者はティク・ナット・ハン師というベトナム出身の禅僧で、師は禅の瞑想法を分かりやすい英語で世界の人々に伝えています。またチベット仏教も、ダライ・ラマ14世を通じて人気を集めています。仏教に関心を抱く人々が海外で着実に増えているのです。
 瞑想、マインドフルネスに関心が高まるのは喜ばしいことです。上座部仏教、密教を学ぶ人が増えるのも結構なこと。しかし、老・病・死の問題を解決できるのは、法然上人の教えしかない——そう私は考えます。
 アジアの各地にも浄土教があります。また欧米には浄土真宗本願寺派のお寺が多くあり、親鸞聖人についてはある程度知られています。しかしながら法然上人の説くお念仏は、台湾の浄土教とも、また同じ日本仏教である浄土真宗のお念仏とも少し違っているのです。究極の大乗仏教ともいえる法然上人の教え、それは歴史や文化の違いを超えた普遍的な価値を持っています。その価値は誰にでも理解することができるはずだ、今こそこの教えを広く世界に発信すべき時だ。そう思うようになりました。
 かといって自分で世界中を駆け回ることはできません。でも今日ではインターネットという強力な道具が味方をしてくれます。そこで、自分でも辞書を引き引き、また協力者も得て英語の記事の掲載を始めたのが夏。それから早くも欧米、アジア諸国を初め数十カ国の方々が閲覧して下さいました。直接メールを下さる方も現われ、中には熱心な念仏信者、法然上人の教えを深く学ばれている方もいて手応えを感じています。
 海外の念仏者と接点を持つことができれば、それがゆくゆくは国内の布教にもプラスの影響を与えてくれる、このようにも期待しています。
 私自身、新たに気づいたことがいくつかあります。一つは毎日のおつとめの大切さです。浄土宗義ではお念仏のおつとめ、すなわち心をこめて「南無阿弥陀仏」と称え続けることを最も大切にしています。しかし実際には、浄土宗のお経全体の中で、お念仏を称え続けるところは一部分だけなのです。それでは前後の読経を省いてお念仏だけを称えたらよいかというと必ずしもそうではありません。確かに「お念仏だけでよい」という教えなのですが、お念仏だけにするとこれがなかなか続きません。それが実際なのです。
 私ども浄土宗の僧侶でも、「日常勤行(にちじょうごんぎょう)」という、ひとまとまりのお経の中で念仏を称えているわけです。私どもの多くはいわば、そのひとまとまりの形式に支えられながら念仏を称えているのです。
 私がこれに気づいたのは、海外の念仏信者の方々がこの「日常勤行」にとても関心をもたれていると知ったからです。日々のおつとめがお念仏を支えてくれているということ、自分が自覚しないでいたことを海外の方々に教えられました。
 また、ネット通販によって浄土宗の数珠や輪袈裟が海外で入手できることも教わりました。TwitterやFacebookも、開教の目的のために始めることにしました。「浄土宗の寺院が近くにない」と悩まれている海外の方々とSNSを通じて日々つながることができるようになったのです。

 国際開教—これからも大いなる希望をもって取り組んでまいります。やがて多くの方々がこの教えを理解し、そこに救いを見出し、お念仏の中で生活して下さるであろうことを確信しながら…。◆