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2009.10

 
あるご相談より

先日頂いたメールです。

「今年の夏に、夫を亡くしました。
仏壇のことについて悩むうちに、こちらのHPにたどり着きました。
ご意見をいただければ幸いです。

結婚当初から夫の両親と同居し、子供にも恵まれ、平穏な暮らしを送ってまいりました。
義父は20年近く前に他界し、その際仏壇を、両親の寝室であった部屋に置くことになりました。
現在も、義母はその部屋で寝起きしております。
四十九日、新盆が終わり、夫の位牌が仏壇に入りました。
別室に精霊棚を設けてあった時のように、自由に手を合わせることができなくなってしまいました。
申し訳ないことですが、義父が亡くなった時にはこんな思いにはならなかったのです。
でも、位牌に手を合わせ夫に語りかけたい、という思いに駆られ、たまらなく悲しくなります。
今は、毎日のお仏壇のお給仕の時に手を合わせるくらいになってしまいました。
義母は、『部屋には自由に入ってくれていいよ』といいますが、
義母は床につくのが早いのです。
夜、私の家事が終わって一息ついた時に
『拝ませて欲しい』というのも気がひけます。
義母としては、夫と息子に囲まれ、安心して眠りについているのでしょう。
一度『仏壇を別の部屋に移したい』と言った時は、頭ごなしに拒否されました。
私自身、夫の位牌にこんなに執着するとは思ってもみませんでした。
私にとってはかけがえのない、大切な大切な人でした。
たくさんの良い思い出を作ってくれました。
これから母を看取り、家を守ってゆかなければならない私には、夫の位牌が心のよりどころなのです。
仏壇を、いつでも手を合わせることができる部屋に移すのは、いけないことなのでしょうか。
義母には、どのように話をしたら分かってもらえるでしょうか。」

「A様
初めまして。林海庵住職の笠原です。
このたびはサイトを通じてメールを頂き、どうも有難うございました。

お仏壇の件、お心に沿わない状況のご様子で、ご心痛お察しいたします。
少し考えてみましたが、お義母様を説得できる名案は思いつきません。

お仏壇に手を合わせることは、もちろん大切です。
そしてもう一つ、より個人的・内面的な供養のしかたがあります。
それは、ご自身のお身体の一部に、ご主人の御霊を感じてみる、という方法です。

たとえば右肩の辺り。これは一つの例ですが、自分の身体の(あるいは周囲の)どの辺りから、ご主人は見守ってくれているのだろう、と身体に尋ねてみます。

これは、その部分に『実感』が湧いてくることが大切であり、(私を含めて)他人がどうこう言えることではありません。
あなたさまとご主人と、お二人の間だけのことです。

気が向かれたら、どうぞ試してごらんになって下さい。」

「笠原様
早速のご回答ありがとうございます。
義父母との同居生活において、夫はいつも、私の側に立っていてくれました。
裏返せば、義母にとっては、結婚してからの夫は良い息子ではなかったのかもしれません。
やっと昔のように、息子が自分のところに戻ってきた、ということなのでしょうか。

私も、義母のそんな心を察しているからこそ、張り合うような気持で
仏壇や位牌に固執しているのかもしれません。

笠原様のおっしゃるように、夫を感じてみました。
後ろから両肩に手を添えてくれているような気がしました。
涙があふれてきました。
今は、辛かった闘病生活から離れて、
穏やかに過ごしていることを願いつつ、
お念仏を称えてみました。

私も義母も、かけがえのない人をなくして3か月。
お互いを思いやる余裕がないのかもしれません。
仏壇の移動も、あきらめずに時間をかけて、ゆっくり
義母に納得してもらえれば、と思います。

お話を聞いていただき、心がたいへん楽になりました。
そしてよいアドバイスをいただきありがとうございました。」

「A様
ご丁寧なご返事を頂き、まことに有難うございました。
拝読しながら、涙がにじみました。

もしお差し支えなければ、このメールのやり取りを、後日サイトに載せさせて頂きたく思うのですが、如何でしょうか。
A様の文面に胸を打たれる人も多いでしょう。また、同じような切実な悩みをお持ちの方にも、役立つと思います。」

「笠原様
ご返信ありがとうございます。

サイトに掲載していただくとのこと、
私は一向に構いません。
私の話がどなたかのお役にたてるのであれば
喜んで承諾いたします。

亡くなった人を自分の身体に感じる供養、という笠原様のアドバイスで、
きっとたくさんの方が心の安らぎを得ることができるのではないでしょうか。

私の悩みに親身にお答えくださり、本当にありがとうございました。
文章にすることで、私の心にも整理がついたように思います。
これからは、私なりに夫の供養をしてゆけたら、と思っています。」■

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