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2020.02

 
お布施のキャッシュレス化
笠原 泰淳 記(令和2年2月)

 時代の変化は誠にめまぐるしいもので、目下、現金を使わないで買いものができる電子決済—キャッシュレス化が急速に広がりつつあります。スーパーに買いものに行きましても、レジで現金で支払わない方がけっこうおられます。(私自身は、今のところ現金派です。)
 寺院が皆さまからお預かりするお布施やお賽銭につきましても、キャッスレスによる受け渡しを容認するのか、いやいやそれは宗教行為にはなじまない、受け入れるべきではない、という議論が起きているようです。

 私自身は、ケースバイケースで宜しいのではないかと思っております。
 寺院も、お布施をお預かりするばかりでなく、寺院どうしのお付き合いの中で、慶弔やお参りに伺う際に金銭をお包みする場合がございます。その場合、住職が自分で用意するわけですが、お包みの上書きを書く、きれいなお札を用意して包む—そのあたりからすでに崇仏の心、あるいは先方に対する心づくしが始まっております。現金でお包みを用意する、さらにそれを当日先方にお渡しする、仏前にお供えするという行ないは、確かに宗教行為のひとつであるといえましょう。その一連の行為をもって、布施行という修行が成り立つ、原則としてはこのように考えます。

 さて、林海庵では、新寺を開く際に広くご寄付を募りました。その時に「郵便振替口座」を作りまして、ご遠方にお住まいの方々からも貴重な浄財をご送金頂きました。また昨年からは、海外の信徒さんからもお布施を送金したいというご要望をいただくようになり、対応できる体制を作ったのです。こうした形を用意するまでに結構手間ひまがかかりましたので、初めて海外の方からお布施をご送金頂いたときは、大感激でした。
 私どもは決してキャッシュレス化を推進してきたわけではありませんが、さまざまな経緯の中で、現金でなくてもお布施やご寄付をお預かりできるようになりました。
 私としては皆さまに、布施行を通じて仏縁を結んで頂くということ、布施行を通じて仏さまに心を届けて頂くことが大事だと思っています。修行という観点からはお包みをご用意頂くところからが始まりではありますが、お心をお預かりする立場としては、時代と共に柔軟に対応することも必要かと思っております。

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