2021.02
西方極楽浄土とは、どのような世界でしょうか。
そこは、私たちが日常経験しているような現実世界ではありません。ちなみに仏教を開かれたお釈迦さまは、この現実世界に実在された方です。生没年に諸説ありますが、大体紀元前6世紀から4世紀ごろの方で、今日のネパール南部で誕生され、35歳で覚りを開き、以後80歳で亡くなられるまで教化伝道に尽くされました。
一方、大乗経典に説かれる極楽浄土はいわゆる現実世界ではありません。「報土」と呼ばれる特別な覚りの世界。天体物理学や天体観測の技術が進歩すれば、やがて宇宙空間内に発見されるだろう…そのような現実の場所ではないのです。
しかしそこがいわゆる現実世界ではないといっても、私たちが想像したり夢見たりするような架空の世界でもありません。そこは阿弥陀仏によって作られたもう一つの現実世界、阿弥陀仏や釈尊、そして諸仏にとっての真実の世界です。
経典には、このように描写されています。
「彼の地は清浄にして汚れなく、優れた七種の宝から成り、光に満ちた、苦しみのない和やかな世界である。妙なる音楽と蓮華の香り、そして大乗の教えに満ちている。
「阿弥陀仏はたくさんの宝物で飾られた蓮華の台座にお坐りになり、そのお身体は巨大で大きく光り輝いている。その無量光明をもって十方世界を照らし、念仏するものをすべてお救いになる。この仏の左右に光り輝く観音菩薩、勢至菩薩がおられ、その他に多くの聖なる修行者がおられる。天人達は妙なる音楽を奏でている…」
少し前のことですが、YouTubeで次のような動画を見つけました。敦煌の壁画を元に台湾の会社が作ったプロモーション・アニメで、極楽浄土が賑やかさに溢れた世界として色鮮やかに表現されています。
台東区の美術館にも元の壁画の模写作品が収められています。
●
敦煌莫高窟壁画第220窟 南壁 阿弥陀浄土変相部分(初唐)
●
同 上
など(作品一覧は 一覧ページ へ)。
極楽浄土=亡くなった方がおられる世界は、決して寂しいところではない——唐代の人々の思いが、このような形で今に伝えられているのです。日本でも優れたアニメーションの技術を生かせば素晴らしい極楽浄土の世界が表現されることでしょう。見てみたいものです。☸