2021.08
先日ある霊園に伺ったときのこと。「もしもカード」なるもののお知らせが目に留まりました。その霊園が発行している携帯用の簡易なカードで、下記のように説明書きがあります。
「この霊園にお墓を買われた方の中で、縁者の方がそのお墓のことを知らなかったために、亡くなられたあと別のお墓に合祀されたケースがありました。このカード(その霊園の所在地などが記されている)を身に着けるなどして、そのようなことにならないようにお気をつけ下さい」
これには私にも思い当たる節があります。私が大変お世話になったあるご住職が、檀家さんたちの前でこのように話しておられたことがあるのです。
「皆さんの戸籍には、お墓のことまでは記載されません。この寺にお墓があるということを、ちゃんと書面に記して縁者の方に分かるようにしておいて下さい」
私は実は、この話を伺ったときはその重要性に気づいておりませんでした。
古くからお寺とおつきあいのある檀家さんであれば、亡くなられらたときにご家族や周りの方が「どこのお墓に納骨すればよいのだろう」と迷われることはまずあり得ないでしょう。しかし、都市部にお住まいの方々が「終活」として新たにお墓や納骨堂を購入された場合に、そのことをお子さんや後見人の方が知らなかった、ということがあり得るのです。
私どもの寺には境内墓地がございませんので、お墓の件ではこのようなことはありませんが、別に、類似した例はあります——いわゆる生前戒名をお授けした方の中で、連絡が取れなくなってしまったケースがあるのです。せっかく満足のいくお墓を求められて、あるいは望んでおられた生前戒名をお受けになって、「やれやれ、これでひと安心」と思っておられたのに、いざというときに思い通りにものごとが進まなかったとしたら、何と切ないことでありましょうか。
ご家族の間で、お墓やお寺のことについてしっかり理解し合えているお宅には無縁の話かもしれませんが、「もしや」、とお心当たりのある方は、ぜひお寺やお墓のことを何かに書いて第三者にも分かるようにしておくことを強くお勧めいたします。☸