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2024.09

 
「自信がもてない」
笠原 泰淳 記(令和6年9月)

「自分に自信がもてない」、「何をしたらよいか分からない」、「将来が不安だ」このような悩みをよく耳にします。
 若い方からこのようなご相談があると、どことなく八方塞がりになったような、まるで高い壁に囲まれたような感じを覚えます。これに対して相談者がある程度年配の方になると、同じような悩み相談を受けても、そこまでの閉塞感は感じません(一般的に言えば、ですが)。つまり、年を重ねてくるとある程度の経験を積んでおられるので、ご自分にできること苦手なこと、得意なこと不得意なことが多少なりとも分かってくるからでしょう。話の内容が具体的になってくるので、こちらも「漠然とした閉塞感」という感じは受けないのです。
 若い頃の「自分に自信がもてない」という感覚は私自身にもありましたが、近来はこの感じを持つ人がとても増えているように思います。そして、その原因は結局のところ自分自身にある、と思い悩んでいる方も多いのではないでしょうか。選択肢はたくさんあるにも関わらず、自信をもって歩んでゆける道をまだ見つけていない—その原因は自分にある…。
 確かにそういう面もあるかもしれませんが、私はここでその「原因」や「責任」を、情報過多の社会や時代に求めたいと思います。

 今の時代に生きてあふれかえる情報に接していると、その情報の、いわば裏の声が聞こえてきます。

「こんなに便利がものがあるのに、あなたはなぜそれを使わないの?そんな調子だと時代に置いてゆかれるよ。」
「あなたはこうあるべきなんだ。今のままじゃだめだよ。」
「こんなに素晴らしい活躍をしている人がいるのに、その一方で君はどうなんだい?」
「一度しかない人生なのに、どうしてもっと楽しもうとしないんだい?でもお金のことも考えなきゃだめだよ」

 豊かな情報の中で、私たちは知らず知らずのうちにこのような沢山の隠れたメッセージを受け取っています。それらは初めのうちは単なる「外からやってきたメッセージ」でしたが、次第に自分の中に取り込まれ、「自分はこうあるべきだ」という信念をもって自分を縛りつけるようになってしまいます。しかも、「一度しかない人生なのに、どうしてもっと楽しもうとしないんだい?でもお金のことも考えなきゃだめだよ」というような矛盾したメッセージも沢山受け取っているのです。これでは八方塞がりになってもしょうがないですね。

 ですから私が悩める若い方にお伝えしたいのは次のようなことです。

  • 自分をあまり責めないこと。情報過多の社会の中で生きていればこうなるのが自然だ、と考えてみて下さい。
  • 自信がなくても、まず一歩を踏み出してみること。そこから多くの発見があるでしょう。あなただけの小さな発見、小さな学びを大切にして下さい。
  • 受け取る情報の裏に隠れたメッセージに気づく、あるいは自分の癖で特定のメッセージを受け取ってしまいがち、という自分の傾向に気づいて下さい。

 私たちは土砂降りのような情報の中で生きてゆかざるを得ない—そうなのかもしれません。しかし仮にそうだとしても、傘をさして自分を守ることはできます。そして、足元を見ながら一歩一歩進んで参りましょう。🙏

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