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「お寺を建てる!」Part III 宗教法人格取得

〜嗚呼、宗教法人への道(日々是れ…手続き)〜


第一に当庵の法人設立業務を記録しておくために、
第二にこれから宗教法人設立に取り組まれる方や関心をお持ちの方に多少ともお役に立てば、と思い、
経過を書きます

+++++書式はただいま整備中です。お見苦しい点もあると思いますが、しばらくお待ち下さい+++++

は じ め に

宗教団体が宗教活動をする上で、法人格を取得する必要があるのでしょうか。
いいえ、そのようなことはありません。法人格を取得しなくても、宗教活動はできます。

では、なぜ法人格を取得するのでしょうか。
今日の日本社会にあっては、法人格を取得することによって、多くのメリットが生じるからです。

  1. 公益法人と認められることによって、社会的信頼性を増すことができる。
    例:当庵の場合、法人格を取得することによってようやく多摩市仏教会に加入することができました。また非法人ですと、銀行口座も代表者個人名義でしか開けません。
  2. 税法上の優遇措置を受けられる。
    宗教法人でなくても、宗教活動収入について非課税措置を受けることは可能です。が、固定資産税・都市計画税については、土地建物所有者が個人名義であるため、課税されることになります。ちなみに林海庵の場合、固定資産税・都市計画税の課税額は年間20万円程度。法人格を取得することによって、寺院の支出会計からこの分が節約できることになります。(5年間で約100万円に達します)
  3. 礼拝施設が法的に保護される。
    寺院の中心は、ご本尊と本堂です。法人格を取得していないと、これらは個人財産ということになります。日常の宗教活動においては、それらが個人に所属していようが法人に所属していようが関係ないようにみえます。たしかに当面は問題ないのですが、たとえば住職が次の代に引き継がれるときに、ご本尊や本堂が個人財産であると、相続や贈与等の問題が生じます。公益的な宗教活動が維持継続されてゆくためには、それら礼拝施設が個人所有ではなく、法人所有であることが望ましいのです。
法人格を取得できる条件は
  1. 宗教法人法第2条に定められた宗教団体であることが必要です。
    第2条:
    「この法律において『宗教団体』とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする以下に掲げる団体をいう。
    一 礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これに類する団体
    二 前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これに類する団体」
  2. 宗教法人法第12条に定める手続きにより、所轄庁(都道府県知事、ただし他の都道府県内にも境内建物を備える場合は、文部科学大臣が所轄庁となる)で規則の認証を受けなければなりません。
    第12条:
    「宗教法人を設立しようとする者は、以下に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
    一 目的
    (林海庵の規則においては、「この法人は、阿弥陀仏を本尊とし、浄土三部経を所依の経典として、浄土宗祖法然上人の立教開宗の精神を体し、浄土宗宗綱に掲げる教旨をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的とし、その他この法人の目的を達成するための業務を行う」と定めています)
    二 名称
    (当庵においては「林海庵」)
    三 事業所の所在地
    四 設立しようとする宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
    (当庵においては宗教法人「浄土宗」)
    五 代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員及び仮責任役員の呼称、資格及び任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限、代務者についてはその職務権限に関する事項。」
    …以下省略いたしますが、第12条第1項は第13号まで、以下第3項まで定めがあります。詳しくは宗教法人法をご覧下さい。
宗教法人格を取得するにあたっての準備
規則認証申請に先立ち、所轄庁に事前相談をする必要があります。東京都の場合、少なくとも3年間の事前相談期間が必要です。また包括宗教団体の承認も必要となるので、そちらにも事前相談をしておく必要があります(浄土宗の場合は総務局担当)。
ちなみに所轄庁の事前相談で聞かれる内容、または提出書類は次の通りです。
ア その宗教団体の由緒、沿革(いわれ、創始年月日、創始の場所、創始者、主な変遷)
イ 主神・本尊
ウ 教義の大要
エ 施設の概要(境内地、境内建物及びその他施設の登記簿、図面等)
オ 教勢(信者数、教師数、布教所数等)
カ 儀式行事の概要
キ 過去3年間程度の活動実績(パンフレット、写真等)
ク 過去3年間程度の財政状況(収支予算、決算書及び財産目録等)
ケ 団体の運営に関する規約及び過去3年間程度の役員会の議事録
…ということは、前提として、過去3年間にわたって、
  • 実体ある宗教活動を行っており、一定数の信者がいる。宗教活動を行ってきたことを示すパンフレットや写真等の資料が存する。
  • 役員会を組織して、活動上重要なことは役員会において決議し、かつ議事録を備えている。
  • 寺院会計を行っている。
ことが必要であり、さらに自己名義の宗教施設を有していなければなりません。
当庵の場合、過去3年間の実績(活動、役員会、会計)はありましたが、賃貸の施設による活動であったため、多摩市に土地建物を取得したことにより、初めて宗教法人格取得の条件がそろったことになります。
加えて、法人格取得にあたっては「宗教活動の永続性」が重視されますので、自己名義の宗教施設があるだけでなく、会計上負債を抱えていないか、もしくは負債があっても近々に返済を完了できることが前提となります。
(あらかじめ自己所有の土地建物があって、そこで宗教活動を始めた場合や、信者さんから土地建物の寄進を受けたような場合は別として、当庵のようにまったくのゼロから活動をスタートさせた場合は、土地建物の取得を借入金に頼らざるを得ません。これをどの程度返済しているかが重要なポイントとなるわけです。)

宗 教 法 人 へ の 道

以下に、当庵の実際の手続き過程を時系列で記録します。「どこで」「何を」するのかを日付と共に逐一記載してありますので、参考にして下さい。

平成20年
3月4日
都庁にて書類提出(「第12回責任役員会議事録」、「建物平面図」等)
それ以前は、約3年間にわたって、年に2回都庁を訪問し、前記のような事前相談を重ねてきました。今回、やっと都庁の担当者から「来年度は、いよいよ規則認証に向けて進みましょう」という言葉を頂きます。
3月19日都庁より現地調査
2名で来庵。土地建物、礼拝施設の確認(図面との照合)や、役員会議事録、会計帳簿類のチェックがありました。
5月27日都庁にて書類提出(「借入金返済計画書」、「第13回責任役員会議事録」、「収支予算書(3カ年分)」、「所属教師僧階辞令」、「不動産重要事項説明書」)
6月3日都庁に「宗教法人規則案」、「財産目録」提出(郵送)
6月12日都庁より、法人設立会議にかける書類(先に郵送した「宗教法人規則案」、「財産目録」)について「これでよろしい」との連絡を受ける
6月24日法人設立会議開催(於林海庵)
6月25日法人設立公告掲示(〜7月3日まで)「設立公告」「宗教法人規則(案)」を寺の掲示板に掲げる。
7月2日宗務庁に法人設立承認関係書類提出
提出書類:「宗教法人設立承認申請書」、「申請項目一覧」、「宗教法人規則」、「境内建物明細書(建物登記簿謄本添付)」、「境内地明細書(土地登記簿謄本添付)」、「境内建物平面図・配置図」、「境内地図面(法務局発行)」、「寄付証書」、「財産目録」、「収支計算書(過去3年間)」、「代表役員就任受諾書」、「責任役員就任受諾書」、「身分証明書(代表役員就任予定者のみ)」、「設立会議議事録」、「寺院周辺の見取り図」、「建物外観、および本堂等建物内部の写真」
7月29日宗務庁より、法人設立承認の連絡を受ける
8月5日宗務庁より、法人設立承認関係書類受領
8月12日都庁にて認証申請書類提出(審査用、各1部)
8月18日法務局にて土地建物登記簿謄本取得(審査の結果不備があったため、再取得)
8月22日都庁にて、正式に認証申請(正式申請、各書類を3部提出。宗教法人規則のみ4部提出。)
提出書類:「宗教団体証明書(宗務庁発行)」、「境内地明細書(土地登記簿謄本添付)」、「境内建物明細書(建物登記簿謄本添付)」、「境内地図面(法務局発行)」、「境内建物配置図」、「境内建物用途別平面図」、「寄付証書」、「財産目録(土地・建物評価証明書添付)」、「収支計算書(過去3年間)」「収支予算書(本年度)」、「信徒名簿写」、「(非法人)寺院規則」、「公告証明書」「設立公告文」「公告したことの状況を判断できる写真」、「申請人が宗教団体を代表する権限を有することを証する書類(宗務庁発行)」、「代表役員就任受諾書」、「責任役員就任受諾書」、「(各役員就任予定者の)身分証明書(本籍地の市区町村長発行)」、「(各役員就任予定者の)登記されていないことの証明書(法務局発行)」、「(各役員就任予定者の)誓約書」、「設立会議決議録写」、「宗教法人設立承認書(宗務庁発行)」、「寺院周辺の見取り図」、「建物外観、および本堂等建物内部の写真」、「過去3年間の宗教活動実績一覧表」、「宗教法人規則」
9月17日都庁より、認証がおりた旨連絡あり。
9月19日都庁にて、規則認証受領(認証日は9月16日)
9月19日法務局にて、法人設立登記(法人設立日、同日土地建物所有権移転)
提出書類:「宗教法人設立登記申請書」(添付書類:都の認証書謄本一式、「登記すべき事項」、「(代表役員)印鑑届書」、「(代表者個人)印鑑証明書」)
9月25日法務局にて、登記完了確認、登記簿謄本取得
10月7日都庁にて、「宗教法人成立届」提出(添付書類─登記簿謄本、代表役員印鑑証明書)、「境内地・境内建物証明願」提出
10月17日都庁にて、「境内地・境内建物証明書」を受領。この書類に基づき、後日土地建物所有権移転登記の際の登録免許税、また固定資産税・都市計画税、不動産取得税が非課税になる。
10月22日法務局にて、登記申請(土地建物所有権移転登記。
提出書類:「登記申請書」─添付書類「登記済証」、「登記原因証明情報」、「(義務者の)印鑑証明書」、「境内地・境内建物証明書」、「土地・建物評価証明書」)
10月27日法務局にて、登記完了確認
10月28日法務局にて、登記申請(地目変更:宅地→境内地、建物の種類変更:居宅→本堂兼庫裏、の登記。
提出書類:各「登記申請書」)
10月30日法務局による現地確認(2名来庵)
11月4日法務局にて、登記完了確認、登記簿謄本取得
11月5日多摩市役所にて、固定資産税非課税の手続き 提出書類:固定資産非課税申告書、東京都の規則認証書、法人登記簿謄本、土地建物登記簿謄本、建物平面図、境内建物配置図)
11月7日法人の銀行口座開設手続き
11月11日多摩市役所より、現地確認のため来庵(4名)
11月18日八王子都税事務所に、不動産取得税非課税手続きについて照会(電話)


これから宗教法人設立手続きを進める方へのアドバイス

ここまで読んで下さった方は、「これはたいへんな仕事量だぞ」と思われることと思います。日常の宗教活動の傍ら進めてゆくことですので、頭の切り替えも必要ですし、実際のところ、骨が折れます。
しかし、終わってみると「大したことはない」という感想があるのも事実。なぜならば、多少手間はかかりますが、終始、手続き業務だからです。難しい交渉をしたり、相手を説得したり、というような困難な仕事ではありません。
また、必要書類が揃えば、認証するのがお役所の仕事です。各関係先(都道府県庁、法務局、宗務庁)の担当者の話をよく聞き、何を求められているかをよく理解し、把握するように努めて下さい。一つ仕事をすれば、必ず一つ前進します。
そして、何よりも根気が第一です。何度でも足を運ぶことを厭わず、じっくりと取り組んで下さい。必ず目標を達成できるでしょう。■