〈考えるべきこと−1〉
在家出身者にとって最初のハードルは「1. 師僧になって下さる方を決める」です。(私の場合は菩提寺[※]の住職にお願いをいたしました[※菩提寺とは、自分の家がお世話になっているお寺、という意味の一般的な呼称です]。)「師僧」としての役を引き受けて頂く─弟子の育成に責任を持ってもらうということは、お互いにとって、決して簡単なことではありません。師弟関係は、弟子が教師資格を取得してから後も一生続きます。ある意味では血縁以上の関わりになります。
師僧になって頂くお願いをする前に、次のことについてよくお考え下さい。
「自分はなぜ浄土宗教師になりたいのか」
僧侶になりたい、それも他宗ではなく浄土宗を希望する−その理由は何でしょうか。ご自分なりの考えをはっきりさせておく必要があります。
「人里離れたところで修行に励みたい」
もしもそれが目的であれば、浄土宗教師資格を取得する必要はありませんし、あなたを一人前の教師にするために費やす師僧や宗門の労力も無駄になってしまいます。
「仏教に興味がある」あるいは「宗教面で指導を受けながら人間的に成長したい」というのであれば、僧侶の道を選ぶのではなく、一人の信徒として良き師とご縁をもたれた方がよいでしょう。
僧侶を志すということは、あなたが将来、社会との関わりの中で浄土宗の布教伝道に励もうという決意が前提となります。
〈考えるべきこと−2 収入について〉
このご質問もよく頂きます。僧侶になったのちに、結果的に収入を得られることはあります。しかし、それを予め保証することはできません。檀家数の少ない寺院では、住職が他に職業をもち、そこで得た収入を寺院維持のために充てている、というケースも珍しくないのです。ましてや在家出身者が個人的収入を目的に活動すれば、僧侶や寺院に対する社会の信頼はますます低下することでしょう。
修行段階では、収入はほとんどないと覚悟しなければなりません。生活費・学費・法衣などの費用は自己負担です。
〈考えるべきこと−3 勉学と修行を全うできるか〉
浄土宗は他力門ですので、あまり厳しい修行はありません。とはいえ、上の「4. 伝宗伝戒道場(加行)への入行資格を得る」「5. 伝宗伝戒道場を成満する」においては一定の厳しさがあるので、それに耐えられる身心が必要です。言うまでもなく勉学も大切です。仕事をされている方は、その間休みを取らなくてはなりません。
第二第三のハードルといえましょう。
〈考えるべきこと−4 資格を得たあとどうするのか〉
勉学・修行をクリアして、苦労の末ようやく教師資格を頂けたとします。そこですぐに宗教活動に従事できるかというと、必ずしもそうではありません。私の佛教大学のクラスメートの中で、「在家出身者であって、しかもスムーズに僧侶としての活動に入れた方」は決して多くはありません。在家出身の教師の多くが、活動の場を得るために苦労をしています。
師僧があなたに活動場所を与えて下さるかどうか、ということは大きなポイントです。しかしもちろん、当初から師僧にそれを約束して頂くわけにはいきません。
在家出身者は、教師資格を得たあとの進路が保証されているわけではないのです。