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僧侶になりたい、あるいは僧侶になるにはどうすればよいか、とお考えの方へ



〈はじめに〉

 このサイトを開いてから、「僧侶になるにはどうすればよいのですか」というご質問をたくさん頂いています。少しまとめた形で先住・笠原泰淳の考えをお伝えしたいと思い、このページを設けました。

 私にとって、僧侶ほどやりがいのある職業はありません。自分なりの力を尽くせる場を頂けるばかりか、思いもかけない感謝の言葉を頂くことも多く、それが大いなる励みになっています。

 僧侶はいわば、人生の応援団です。人さまの人生に深く関わって不安や悲しみ、苦しみを乗り越えるお手伝いをさせて頂く大切な仕事です。
 悩み多きこの時代、僧侶という職業に皆さんの力をどうぞ発揮して下さい。

(過去の関連Q&Aもあります。このページの末尾にリストアップしました)

〈宗門子弟と在家出身〉

 さて、寺院で生まれ育った方(宗門子弟)であれば、「僧侶になる(=教師資格を取得する)にはどうすればよいか」という疑問は主として手続き上の問題として起こってきます。個々の疑問や相談内容に応じて、浄土宗門の関係者、すなわち師僧や法類、組・教区の役職者、大学などの養成機関や宗務庁(総務局)が相談窓口になって下さることでしょう。

 一方、寺院の出身や寺院関係者ではないが、浄土宗の教えに惹かれて浄土宗教師になりたい、という方もおられます。いわゆる「在家(ざいけ)出身」と呼ばれる人たちです。(私もその一人です)

〈僧侶になるステップ〉

 寺院出身、在家出身を問わず、浄土宗教師になるための一般的なステップは以下の通りです。

  1. 師僧を決める
     浄土宗教師の資格を持つ人であれば誰でも師僧になることができます。師僧には、弟子を充分に育成する責任があります。

  2. 得度する
     得度とは仏門に入ること。「得度式」を師僧のもとか、あるいは本山において受けます。

  3. 度牒(どちょう)授与および僧籍登録の申請を行なう
     「度牒」とは、得度したことの証明書です。この証明書を頂く申請をします。また僧籍登録とは、浄土宗僧侶としての籍を登録することです。これらの手続きは、僧名(浄土宗僧侶としてふさわしい漢字二文字)で行なわれます。申請者は師僧であり、申請先は宗務総長です。

  4. 伝宗伝戒道場(加行─けぎょう)への入行資格を得る
     養成講座、大正大学、佛教大学等で所定の科目・課程を履修します(3年間程度かかります)。科目は浄土学概論、選択集、浄土宗史、仏教学概論、仏教史、宗教法制、実践仏教学、同和教育概論など。

  5. 伝宗伝戒道場を成満(じょうまん=修了)する
     道場は、総本山知恩院と大本山増上寺において、毎年12月に3週間の期間で開かれます。朝から晩までビッシリのスケジュールで、集中的な学習と修行、儀式が行なわれます。

  6. 僧階(教階・学階)を取得する
     伝宗伝戒道場を成満したのちに、師僧が宗務総長に申請して取得します。

〈考えるべきこと−1〉

 在家出身者にとって最初のハードルは「1. 師僧になって下さる方を決める」です。(私の場合は菩提寺[※]の住職にお願いをいたしました[※菩提寺とは、自分の家がお世話になっているお寺、という意味の一般的な呼称です]。)「師僧」としての役を引き受けて頂く─弟子の育成に責任を持ってもらうということは、お互いにとって、決して簡単なことではありません。師弟関係は、弟子が教師資格を取得してから後も一生続きます。ある意味では血縁以上の関わりになります。
 師僧になって頂くお願いをする前に、次のことについてよくお考え下さい。

「自分はなぜ浄土宗教師になりたいのか」

 僧侶になりたい、それも他宗ではなく浄土宗を希望する−その理由は何でしょうか。ご自分なりの考えをはっきりさせておく必要があります。
 「人里離れたところで修行に励みたい」
  もしもそれが目的であれば、浄土宗教師資格を取得する必要はありませんし、あなたを一人前の教師にするために費やす師僧や宗門の労力も無駄になってしまいます。
 「仏教に興味がある」あるいは「宗教面で指導を受けながら人間的に成長したい」というのであれば、僧侶の道を選ぶのではなく、一人の信徒として良き師とご縁をもたれた方がよいでしょう。
  僧侶を志すということは、あなたが将来、社会との関わりの中で浄土宗の布教伝道に励もうという決意が前提となります。

〈考えるべきこと−2 収入について〉

 このご質問もよく頂きます。僧侶になったのちに、結果的に収入を得られることはあります。しかし、それを予め保証することはできません。檀家数の少ない寺院では、住職が他に職業をもち、そこで得た収入を寺院維持のために充てている、というケースも珍しくないのです。ましてや在家出身者が個人的収入を目的に活動すれば、僧侶や寺院に対する社会の信頼はますます低下することでしょう。
 修行段階では、収入はほとんどないと覚悟しなければなりません。生活費・学費・法衣などの費用は自己負担です。

〈考えるべきこと−3 勉学と修行を全うできるか〉

 浄土宗は他力門ですので、あまり厳しい修行はありません。とはいえ、上の「4. 伝宗伝戒道場(加行)への入行資格を得る」「5. 伝宗伝戒道場を成満する」においては一定の厳しさがあるので、それに耐えられる身心が必要です。言うまでもなく勉学も大切です。仕事をされている方は、その間休みを取らなくてはなりません。
 第二第三のハードルといえましょう。

〈考えるべきこと−4 資格を得たあとどうするのか〉

 勉学・修行をクリアして、苦労の末ようやく教師資格を頂けたとします。そこですぐに宗教活動に従事できるかというと、必ずしもそうではありません。私の佛教大学のクラスメートの中で、「在家出身者であって、しかもスムーズに僧侶としての活動に入れた方」は決して多くはありません。在家出身の教師の多くが、活動の場を得るために苦労をしています。
 師僧があなたに活動場所を与えて下さるかどうか、ということは大きなポイントです。しかしもちろん、当初から師僧にそれを約束して頂くわけにはいきません。
 在家出身者は、教師資格を得たあとの進路が保証されているわけではないのです。

 いかがでしょうか。これらの事を承知した上であれば、是非とも頑張ってこの道を歩んで頂きたいと思います。
 ちなみに林海庵に弟子入りを希望される方には、まず一年間当庵の行事(お念仏の会、写経会など)に出席して頂きます。その上でなお入門を望まれるのであれば、弟子入りを認めるかどうか判断します。

 熱意ある方の発心(ほっしん)を期待いたします。


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